日本の仕事を海外で行う“海外Iターン”という働き方
オフショアの新しい形
(株)TMJ
ICTの発達でいつでもどこでも働ける環境が整備されつつある。もちろん、そのエリアは国内に留まらない。海外もバリバリの“圏内”だ。そうした中、企業が途上国を拠点にコストメリットを生かすオフショアの新たな形が注目されている。フィリピン・セブ島でのコールセンター業務に、あえて日本人を積極採用するTMJ。コスト削減優先のオフショアとは一線を画す、同社の海外活用戦略の実態から、その実状と可能性を探る。
なぜフィリピンで日本人なのか
これまでのオフショアのビジネス展開といえば、中国が基本だった。人件費の安さや日本との距離など、日本企業が活用する上でのメリットが大きかったのがその理由だ。だが、その人件費の高騰に伴い、エリアは南下し、近年はASEAN諸国へとシフトしつつある。特にフィリピンは成長著しく、オフショア拠点としての注目度が急上昇している。
「フィリピンはコールセンター受託規模が世界一でインフラが整備されています。治安が良く、生活しやすいことに加え、良質な留学先として人気があり、渡航者数が年々増加しています。日本人人材を集めるには都合のいい環境となっています。さらに英語を話す人口が多いことも魅力です」と同社は、フィリピンを拠点する理由を明かす。
つまり、フィリピンは、企業にとって、オフショア拠点としてハード面が充実しており、かつグローバル志向の高い日本人にとっても魅力あるエリアというワケだ。企業そして、海外でのスキルアップや飛躍を視野に入れる日本人ワーカー相互にメリットがあるのが、フィリピン・セブ島なのだ。
新興国待遇でも日本人が集まるワケ
フィリピン展開にあたり、同社は現地でコンタクトセンターを展開するなど高い実績を誇るガリバー・オフショア・アウトソーシング(株)と提携している。日本国内と同等の回線品質を確保した上で、現地日本人、さらに日本国内でも現地で働く意志のある日本人の採用を行った。
「現地人材にも優秀な方はいますが、品質に妥協しないという意味では、日本人に勝る人材はいません。そこで、まず、国内の日本人を求人しました。海外で英語を学びながら頑張りたいという向上心の高いスタッフが集まってくれましたね」と同社は振り返る。
現地での仕事は、日本人が相手で、仕事自体は日本と変わりない。その意味では、海外で働くといっても不安は少ないが、それでもそのためにわざわざ日本での生活を捨ててまでいけるのか、となると障壁は決して小さくない。給与も現地相場だ。だが、実際には、現地だからこそ磨けるビジネススキルもあり、そうした目的を持つ日本人にとっては、うってつけの“求人”となったようだ。
現地で働く日本人スタッフ明かすその魅力とは
現地でオペレーターとして活躍する藤方良基氏は「海外で仕事をしながら英語のスキルアップをしたいと考え、セブで仕事をすることを決めました。コールセンターの仕事は初めてでしたが、ベテランのSVから非常に実用性のある研修を受けることができ、自分のスキルアップのためにも役立つと考えています。英語は目に見えて上達しており、その上達が仕事のモチベーションにもつながり、楽しく仕事ができています」と、海外Iターンの効能を明かす。
語学留学先として人気のフィリピン・セブ島には、学生はもちろん、休暇を取って“社会人留学”するビジネスパーソンも多く、ロケーションとしての魅力は大きい。同社もそうした語学習得のニーズに対するバックアップは惜しまず、その点でも企業側と働く側の利害関係は一致する。給与は、現地相場になるため、日本で働くよりも少なくなるが、当然、物価も安く、不自由のない生活が送れる。
少子高齢化で今後ますます人口減少が進む日本。一方でテクノロジーの進化でいつでもどこでも働ける環境が整備されている。そう考えれば、国内で働くことにこだわる必要はどこにもない。給与に多少差があったとしても、グローバル人材としてのスキルアップによる人材価値の向上を考えれば、むしろ十分におつりがくるかもしれない。企業にとってもメリットがあり、“海外Iターン”はまさに、新しい働き方のひとつの形として、今後、スタンダードになり得る求人であり、ワークスタイルといえるのかもしれない。
【会社概要】
会社名 : 株式会社 TMJ
所在地 : 〒160-0023 東京都新宿区西新宿7-20-1 住友不動産西新宿ビル
設立 : 1992年4月1日
資本金 : 3億円
電話番号 : 03-6758-2000
URL : http://www.tmj.jp/