
軽過ぎるフットワークはなぜネットワークに結びつかないのか
人間関係はなぜ“重い”のか
友達100人か親友3人か。ビジネスの世界では人脈が大事といわれる。なににつけても人脈。そんな印象すらある。そこで、やたら異業種交流会やイベントに乗り込んで多くの名刺を交換する輩がいる。SNSでも手当たり次第に友達申請し、その輪を広げていく…。
このタイプのほとんどが、皮肉なもので仕事ができない。理由は簡単だ。ネットワークづくりが目的化しているからだ。人脈とは、人の脈。そこに流れがなければ、ただの紐だ。つながっているだけで、それ以上何もない。下手をすれば、複雑に絡み過ぎて身動きが取れなくこともある。
なぜこんなことになるのか。目的としてのネットワーク作りは、ゴールが知り合った人の数になりがちだ。一瞬で親友のように親しくなれることもあるが、普通は長時間をかけてじっくりと熟成していくのが、真の交流というものだ。そこに、ズケズケと下心丸出しで近寄っていってもうまくいくはずがない。相手は、とっとと帰って欲しいから名刺交換にだけは応じているのかもしれない…。
会社を辞める理由で常に上位にある「人間関係」。これなどは、安易に上司や同僚に恵まれなかったという話で済ましてはいけない。人間関係がうまくいかない元凶は、当の本人にも必ずあるハズなのだ。人脈作りを目的化してしまう輩なら、上司のいうことをしっかりと咀嚼しないケースも十分に考えられる。同僚からは、表面的な付き合いがミエミエで煙たがられているのかもしれない…。
自分が心から付き合いたいかが人脈の基本
大事なことは、自分が心からお付き合いしたいかを見極めてアプローチしているかだ。あるいは、一期一会の精神で、誠心誠意、目の前の人と向き合えるか否か。何かの縁で人と知り合った時、どんなスタンスで向き合うのか。人脈を拡げたり人間関係を良好に保つということは、それ自体を目的することでは決して成しえないことを心得ておかないと、そこに何の深化も起こらない。
面倒だ、時間がかかる。そう思うとしたらあまりに愚かだ。人脈というのは、数うって稼ぐものではない。ひとつの価値ある深い付き合いがあれば、そこから自ずと広がっていく。しかもそれは、不思議なほどに自分が必要とする人脈として広がっていく…。結果的に、手当たり次第、声をかけるより圧倒的に速く、確実に広がる。
急いては事をし損じるということわざがある。何事にも当てはまることだが、人間関係ほど、時間と比例して熟成されるモノはない。逆にいえば、急いで距離を縮めようとするほど、うまくいかないのが、人間関係というものだ。
今後、人工知能が浸透すれば、高速で的確な判断がなされることになる。これまで人が10年かかかった判断を1時間でするかもしれない。だが、それが人間関係のことだった場合、人は一旦はその判断に従うが、それが本当かどうかを探りあい、結局、本来必要となる長い時間をかけ、その真偽を検証をすることになるだろう。